くろにわの雑記

精神障害者の日常、ゲーム、その他雑記です。

むかーし、むかしのことだった

母親の朝帰りを待つ少年は、疲れきってしまった。
―部屋に立ち込めるのは不穏な空気。

お父さんは、お母さんの朝帰りが気に入らない。
もっと言えば、お父さんが家に帰ってくる前にお母さんが家にいなければ、気に入らない。

お父さんの苛立ちは、少年の精神を不安にさせます。
なぜなら、両親の喧嘩の前兆だからです。
そのため、少年は「お母さんに早く帰ってきて欲しい」という想いと、絶対に起こるであろう「喧嘩への恐怖」という2つの感情が入り混じった状態にありました。


―お母さんが帰ってきました。

お父さんとの口論が始まります。
少年は何もできず、ただ立ち尽くしていました。

両親の口論は納まりません。
そのうち、どちらかが物を投げ始めました。
ビール瓶、コップ、皿、醤油入れ、泡だて器、とにかく目の前にあるものはすべて投げてやろうと言う勢いでした。

割れ物は割れ、臭いのつく液体は座布団やカーペットに染み込みました。

そのうち、お母さんは出て行く準備をはじめます。
少年はここでまた、不安になります。
なぜなら、「自分を置いて、お母さんがいなくなってしまう」と考えたためです。
少年はお母さんに、「僕も行く」と伝えました。
お母さんは、「私は、お姉ちゃんとお兄ちゃんだけが要るの。お前は要らない」と応えました。

少年はそれでも諦めません。
自分で自身の服や下着をリュックにつめて、お母さんについて行くというアピールをするのです。
しかし、お母さんはそれを無視し、「お前はつれていかない!」と怒鳴るのです。
少年は泣きました。
泣きながら、駄々をこねるようにお母さんに何度もつれて行って欲しいとお願いするのです。
しかし、それでもお母さんは少年の気持ちをわかってあげませんでした。

用意を終えたおかあさんに、おとうさんは尋ねます。
「本当に出て行くのか?」
お母さんは無視をします。

お母さんは嘘吐きです。
出て行くと言いながら、友達の家に泊めてもらったり、外で時間を潰す程度で返ってくることもありました。

おかあさんが家からいなくなったあと、お父さんは眠りにつきます。
酔ったお父さんは眠る癖があるのです。


―残された風景

フローリングや他の部屋の床に割れ物が散らばっています。
カーペットや座布団には醤油やお酒が染み込み、その臭いが立ち込めています。
テーブルも小物も、配置が滅茶苦茶です。
部屋全体が乱雑です。


―かたづけ

少年はかたづけをはじめます。
まずは割れ物から。
順番は考えませんでした。
とにかく危ないと感じるものをまずはかたづけようと。

喧嘩は深夜に起きました。
少年の住んでいるところは、雇用促進住宅と呼ばれるアパートのような賃貸でした。
そのため、お隣りさんのことを考えたなら、掃除機をかけることができません。

しかし、少年は有効な方法を知っていました。
スリッパを履くのです。
そうすれば、ガラスの破片や食器の破片を踏んでも傷つくことはありません。
スリッパを履き、ほうきとちりとりでガラスの破片と食器の破片を集めます。
集めたそれらの破片は、ビニール袋に入れておきます。

次は、染み込んだ醤油とお酒です。
これは雑巾でポンポンします。
絞った雑巾でポンポンして、醤油やお酒を抜き出していきます。
それでも、落ちない色は落ちないですし、取れない臭いは取れません。
そのため、少年はある程度のところでやめるのです。

最後に、乱雑になったテーブルや小物の再配置に移ります。
テーブルはひっくり返っています。
少年の力では中々難しい作業でした。
しかし、勢いをつければどうにかなるものでした。
そして、小物の配置。
例えば、つまようじ、綿棒などはバラバラに床に散らばっています。
それらを集め、容器に入れなおし、元にあった場所へ戻します。

―かたづけ終わって

気づけば朝になっていました。
少年に眠気はありません。
ただ疲れと怯えがあるだけでした。

その中で、学校に行かなければなりません。
時間割を確認し、ランドセルに教科書を入れ、登校しました。
その際、朝食をとったかどうか、覚えていません。
また、かたづけ終えて、登校する時間になるまで何をしていたのかも覚えていません。

少年は、疲れきっていました。
体力の面でも、精神の面でも。

―他方、「彼ら」は

お父さんは少年が家を出た後、出社します。
お母さんはそのまま、友達の家から出社します。

そして、少年が学校から帰ってきたあと、お母さんが帰ってきます。
少年は嬉しくてたまりませんでした。
お母さんは特に何を言うわけでもありませんでした。

お父さんが帰ってきました。
お父さんも、少年とお母さんには何も言うことはありませんでした。

そうしてまた数少ない「日常」が訪れました。


---------- キリトリ -----------

姉は既に家を出ていました。

兄の記憶が曖昧なんですよね。
両親が喧嘩をしていたとき、確か自分の部屋にいたように思うのですが。
そして、母親と一緒に出て行ったという記憶が、かすかにありますが、記憶なだけに思い違いかもしれません。

「平穏な日常」は本当に数少ないものでした。
父は大体、夜の7時頃帰ってくるのですが、母がそれまでに家にいないと不機嫌になり、母の帰宅後必ず喧嘩になりました。
その際は、上記のような部屋が乱雑になるような喧嘩はしませんが、少なくとも怒声、罵声の応酬で、本当に怖かったです。
確か、それが週5くらいだったような。で、上記の酷いヤツは月に1、2回のペースで。

自分はどちらに味方することもできず。
ただ、母の機嫌をとるために、母寄りだったような記憶があります。
自分は母が好きでした。
どんなに酷いことを言われても、ご飯を作ってもらえなくても、兄の暴力を見て見ぬフリをしていても、好きでした。

しかし、今は憎しみの対象になってしまいました。
それは他の原因があるのですが、それはまた別の機会にでも。

今日の物語みたいなのは、いったい何のために書いたんだろうなw

ちなみに今月、自分の誕生日の日、母は友達と遊びに行き朝帰りでした。
まぁ、今の歳になって母の行動に関して何か言うこともない。
ただ、過去の少年にはどうか思いやりをもって接して欲しかった。
ありえないありえないw
過去は戻らない。

これから、もない。